パラダイムシフト 〜アヒルがウサギに見える日〜

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help RSS 完全否定されている「ゲーム脳仮説」

<<   作成日時 : 2008/02/17 21:23   >>

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現代の子供たちは、ゲームが大好きです。わが子も例外ではありません。おばあちゃんに買ってもらったゲームボーイに夢中になったり、居間のパソコンを占領してオンラインゲームに興じたりしています。どこの家庭でも、学業がおろそかにならないように、あの手この手を使っていることでしょう。わが家の「ゲーム対策」は、愛妻のひと言です。

「ゲームをやりすぎると、バカになるわよ!」

4年前に初めてこの言葉を聞いたときには、子供よりも私の方が抵抗しました。サイエンスジャーナリストを自認している私にとって、看過できない主張だったからです。

「そんなこと、脳科学でも明らかになっていないよ」

「うそ〜? テレビで言っていたわよ。この前の殺人事件の犯人も、ゲームのやりすぎだって」

その事件とは、2004年に大阪の寝屋川で起きたもの。17歳の少年が母校の小学校に乱入し、教職員を殺傷した事件です。ワイドショーでは、この少年がゲームのやりすぎで「ゲーム脳」になっていたと、しきりに説明していたというのです。

ゲーム脳とは、脳神経科学を専門とする医学博士の某大学教授が2002年に執筆した「ゲーム脳の恐怖」(NHK出版)という本で、一躍有名になった仮説。この本の帯には、次のような言葉が記されています。

「テレビゲームが、子どもたちの脳を壊す! 脳波データの解析で、その恐ろしさが明らかに」

なんとも衝撃的なコピーです。宣伝文句の通り、内容も十二分に衝撃的なものでした。ゲームをやりすぎると、前頭葉の機能が低下して、痴呆の重い人と同じような脳の状態になるというのです。

この本は発売から間もなく、さまざまな学者から批判されるようになりました。「被験者が少なすぎる」、「著者が独自に開発した装置で脳波を測定しており、データに信頼性がない」、「α波、β波の意味を間違って理解している」など、いやしくも博士号をもった学者にとっては致命的な指摘までなされました。ついには、日本神経科学学会の会報「神経科学ニュース」で、津本忠治会長が次のように述べるまでに至ったのです。

「こういった本は神経学に対する信頼を損なうことになる。今までは放置の姿勢だったが、これからは間違いを正すべく努力したい」

つまりゲーム脳という仮説は、専門家から完全に否定されたわけです。ところが、その後もメディアでは、ことあるごとにゲーム脳を持ち出しています。少年による凶悪犯罪が報じられるたびに、「ゲームのやりすぎで、脳が異常になっている」と述べる識者が多いのです。だから、わが妻もすっかり感化されてしまったわけです。

実は、目新しいものが登場すると「子供に悪影響を与える」と叫ばれるのは、世の常なのです。1940年代を舞台にした「ラジオ・デイズ」という映画でも、「ラジオは子供を暴力的にする、怠け者にする」というセリフが語られているくらいです。テレビ、家庭用ビデオデッキ、インターネットなどが普及したときも、同じように言われました。

ゲーム脳も、基本的には同じ流れです。ただ、今までの「目新しいもの批判」と少し違う点は、科学者が書いた本、脳波の測定、データの分析……といったように、一般人にとって科学的だと感じられた要素が多かった点でしょう。しかし、こういうことを妻に説明しても、なかなか理解してもらえません。

「科学者が言ってるんだから、それなりの根拠はあるんでしょ?」

「そりゃあ、根拠があるから仮説を発表しているんだけどさ、その根拠自体があやしいと、他の学者から指摘されているんだよ」

「そんな難しいことを言われても、分かんないわよ。要は親としたら、子供がゲームをやりすぎたら不安なわけよ。その不安を解消してくれた説なんだから、みんなにウケているんじゃないの?」

「まあ、それはそうなんだけど、間違った学説を拠所にして子供をしつけるというのは、科学的な態度であるとは思えないのだけれど…」

「あなたは科学オタクだから、細かいことばっか気にするのよ。子供がゲームをやりすぎたら困るんだから、いいのいいの」

「オタクじゃなくて、ジャーナリストなんだけど…」

「オタクじゃん」

「……」

狭いわが家を科学モノの本で占領しているという弱みもあり、これ以上は強く押せませんでした。

確かに、何ごとも「やりすぎ」は良くありません。四六時中ゲームに没頭して勉強をしなければ、天才でもない限り成績も落ちるでしょう。そういう意味では、「ゲームをやりすぎると、バカになるわよ!」という妻の言葉は、間違いだともいえません。だから、今では好きなように言わせています。

「しかし…」と、私はその妻の言葉を聞くたびに思います。

科学者が唱える仮説を、一般の人は無批判に信じてしまいます。「いかなる偏見も持たず真理を探究するのが科学者であり、そのような彼らの努力によって着実に進歩していくのが科学である」と、無意識のうちに信じているからです。しかし、科学はそんなに沈着冷静でもないし、清廉潔白でもありません。極めて人間くさい学問なのです。

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興味深く、そして、悩ましくなる事例⇒完全否定されている「ゲーム脳仮説」 パラダイ ...続きを見る
Interdisciplinary
2008/02/18 00:06

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
ゲームばっかというか、ゲーム中心の生活をしていたら(以前の私がそうでした)、確かにおかしくなります。(厳密にはもうおかしくなる!と良心が警鐘を鳴らしまくっていたというのが正しい)それがたとえまともな仕事に就いていたとしてもです。そういう実体験を踏まえた身としては、ゲーム脳仮説というのは真実に見えるのです。
はじめまして
2011/10/21 18:39
●はじめましてさん
脳に物理的な障害が生じているわけではありませんので、ゲーム脳という仮説は誤りです。
小林浩
2011/10/26 21:12
なるほど、そういう意味ですね。了解しました。
はじめまして
2011/10/27 13:51

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