パラダイムシフト 〜アヒルがウサギに見える日〜

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help リーダーに追加 RSS 複雑系の科学(12)「自己組織化臨界」

<<   作成日時 : 2008/05/31 23:27   >>

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「複雑系の科学」の連載が、しばらく途絶えてしまいました。楽しみにしていた人には申しわけありません。え? 別に楽しみしていない? それはすみません。(^_^; とにかく、複雑系の科学については、コツコツと書きためていこうと思っています。今回は、「自己組織化臨界」というものについて解説します。

これまでの連載では、どのスケールでも同じようにみえるフラクタル現象が、自然界や人間社会に多く存在することを示しました。その代表として1/fゆらぎを詳しく紹介しました。パワー・スペクトルと周波数(f)の両対数グラフ(1目盛り増えるごとに10倍となるグラフ)で表すと、fの逆数の傾きをもつ右肩下がりの直線になるために、1/fゆらぎと呼ばれています。

1/fゆらぎは、「べき乗分布」の一形態です。べき乗分布とは、両対数グラフで直線を描く分布のことです。その傾きが1/fであるのが「1/fゆらぎ」ですが、直線になる分布は1/fに限らないのです。数学的には、いろんな傾きが存在するわけです。現実の現象でも、1/fだけではなく、さまざまなべき乗分布が発見されています。

例えば、砂山の上から少しずつ砂を落としていくとします。山の傾斜が緩やかなときは砂は蓄積されますが、ある程度の高さになると雪崩が起きて山は低くなります。(雪崩とは雪が崩れるものですが、他に簡潔な表現がないので、こう呼びます。)

画像このように、砂山は蓄積と雪崩を繰り返し、山の高さと傾きはほぼ一定に保たれます。デンマーク生まれの科学者パー・バックは、砂、米粒、ガラス・ビーズ、ポリエチレン・ビーズなどで実験を行い、左のグラフのような結果を得ました。雪崩が起きる頻度と、雪崩の規模(崩れた粒の数)は、両対数グラフで見事な直線を描いたのです。べき乗分布です。

グラフをみれば明らかなように、大きな雪崩ほど稀にしか起きません。小さな雪崩は頻繁に起こります。これらの雪崩は、一見バラバラに起こっているように見えますが、実は雪崩の頻度と規模の間には、べき乗分布という法則性が成り立っているのです。

パー・バックは、砂山が一定の高さと傾きを保つ状態を、自己組織化臨界と名付けました。「self-organized criticality」の訳語です。自己組織的臨界状態と呼ぶ場合もあります。

砂山は自己組織化……つまり自身によって安定した形状を保っています。しかし、その安定性は静的なものではなく、動的な砂の流れによってかろうじて維持 されているという意味で臨界状態にある……。このような状態が、自己組織化臨界です。

自己組織化臨界は、多数の要素間に相互作用がある系(システム)の特徴だと考えられています。雪崩の規模が、砂同士の相互作用によって決まるように、多数の要素間に相互作用がある系は、常に自己組織化臨界を保とうとするというわけです。

では、自然現象や社会現象の中でみられる自己組織化臨界を紹介してみましょう。

画像こちらは、地震の発生回数と規模(マグニチュード)の関係です。べき乗分布になっています。地震は、ある地殻が別の地殻にぶつかって、下にもぐり込むことで発生します。圧力とエネルギーが常に加えられている環境下で、自己組織化臨界を保とうとしていることが伺えます。

画像各都市の人口と、人口の多さの順位も、べき乗分布となります。左は日本の都市の場合ですが、アメリカの都市でも1890年から現在に至るまで、べき乗分布を示すことが分かっています。

都市は、その人口に比例して人々を引き寄せる力を持ちます。そのような人々の移動が、さらに人口を増やそうとする原動力となります。しかし、人口が増えすぎると、別の場所で都市が形成されるようになります。やはり、雪崩と砂粒との関係と同様に、自己組織化臨界を保つのです。

画像こちらは、貿易における各国からの年間輸入額とその順位の関係。やはり、べき乗分布となります。この現象は、どのようなメカニズムで起きるのか分かっていません。たぶん、企業、政府、消費者という多数の要素が何らかの相互作用を起こし、隠れた秩序を生み出しているのでしょう。

画像こちらは、「ジップの法則」としても知られているものです。ジョージ・キングスリー・ジップという学者が発見しました。聖書、新聞、小説など、英文に出てくる単語の頻度とその順位が、べき乗分布になるのです。

しかも、頻度がn番目の単語は、頻度が1番目の単語の1/nの確率で現れるのです。例えば、「the」、「of」、「and」、「to」はそれぞれ、0.1、0.05、0.033、0.025の確率で出現しています。周波数ではないので1/fゆらぎとは言いませんが、直線の傾きは1/fゆらぎと同じ「-1」です。

ジップの法則の規則性は、言葉の相互作用に起因していると考える学者が多いです。人間が単語を並べて言葉にするとき、同じ単語ばかりが多すぎれば意味が伝わりにくいし、同じ頻度で現れては単調で不便です。言葉は、会話や文章の中で単語を並べていくものなので、単語の出現頻度はちょうどよいバランスを保つようになる……、つまり自己組織化臨界を保つようになると考えられています。


自然、社会、言語などの壁を超えて、べき乗分布の法則が働いています。これは、多数の要素が相互作用をもつ系が到達する「自己組織化臨界」という考え方で、統一的に解釈できそうです。しかし、自己組織化臨界の理論は、まだまだ十分な研究がなされていません。

複雑系の科学は、こうした課題を1つ1つ解明しようとしています。

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